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【要約】最新脳科学で読み解く 脳のしくみ サンドラ・アーモット

最新脳科学で読み解く 脳のしくみ サンドラ・アーモット

聴覚

周波数で音の高さが決まり、「高さ」で音の強さが決まる。こうした音の波は、外耳を通って「蝸牛」と呼ばれる内耳の器官へ伝えられる。蝸牛では、らせん状にまかれた長い膜に沿って、音を感知する細胞がずらりと並んでいる。音の圧力で耳の中のリンパ液が動くと、この膜が周波数によって違った震え方をし、その振動が「有毛細胞」と呼ばれるセンサーを活性化する。この細胞についている線維の動きによって、振動信号は他のニューロンが理解できるような電気信号に変換される。

自閉症

ここ数年、ワクチンと自閉症の関連が指摘され、注目を集めている。すべての騒ぎの発端は、1998年にイギリスの胃腸病学者が行ったある研究だ。その研究論文は、胃腸症状によって選ばれた12人の患者に関するもので、そのうち9人は自閉症の基準を満たしていた。8人は子供で、その親たちは、自分の子の自閉症の症状が現れたのは、はしか、おたふくかぜ、風疹を予防する混合ワクチン(MMR)の摂取前後だったと報告していた。

のちに胃腸病学者の12人の共同執筆者のうち10人は「データが十分ではないため、この論文でMMRワクチンと自閉症の因果関係がなんら立証されていないことをはっきりさせておきたい」といて、その論文を撤回した。実際、この研究には「対象群」さえなかった。

また、親たちがワクチン接種と自閉症を結びつけたのは、その二つが同時期に起きることが原因かもしれない。ワクチンは生後12~15ヶ月で接種、自閉症の症状も生後12~24ヶ月の間に現れ始める。

1979年にはじまったある研究では、ロンドン地区のすべての自閉症、または自閉症スペクトラム障害の患者が調べられた。その結果、自閉症の子供たちが、通常の子供たちより、ワクチンを摂取されている確率が高いことはなかった。ワクチン接種の直後に自閉症の診断が特に多いということもなかった。

ケネディが指示するのは、「自閉症はチメロサールのなかのエチル水銀が原因」という説。チメロサールは2001年までアメリカのいくつかのワクチン(MMRではない)に使われていた防腐剤だ。この説の主な根拠は、自閉症の診断が過去数十年のあいだ増え続けているということ。しかし、このデータが本当に患者数の増加を示しているかは分からない。チメロサールを含んだワクチンが1988年に導入されてから自閉症の診断が急増したということはなかった。チメロサールは1991年から2001年までアメリカのワクチンに使われていたけど、自閉症の診断が増え始めたのは、それより前で、チメロサールが排除されてからも診断は減っていない。カナダとデンマークでも1995年にワクチンからチメロサールを除いたのに、自閉症と診断される比率は下がっていない。

薬物とアルコール

幻覚薬の多くは、マジックマッシュルームやウバタマサボテンに含まれているような天然の化学物質。一番厳密に作用する幻覚薬は、合成化学物質のリゼルグ(リゼルギン)酸ジエチルアミド、略称LSDだ。LSDには中毒性がなく、脳に永久に続くような器質的損傷を引き起こすことはない。また特定のセロトニン受容体と厳密に結合するから、用量はごく少なく、20~50mg(アスピリン1錠の数万分の1)だ。

大抵の薬物に副作用があるのは、狙った受容体以外の受容体にも結合するからだ。LSDと違って、キノコのような天然の幻覚物質には多くの化学物質が含まれていて、様々な受容体を活性化する。ただ身体的な副作用がないとはいえ、LSDによる幻覚体験の一部は、心理的な影響が長引いて混乱状態を招く。ごくまれに精神病を引き起こすこともある

幻覚薬は意識を変容させる強烈な体験を生み出す。例えばLSDは驚くほど鮮明な想像を引き出して、幻覚状態でなければ得られないような思考と知覚をもたらすこともある。

代謝型経路を介して作用する精神活性物質には、他にはマリファナの活性成分であるデルタ-9-テトラヒドロカンナビール、略称THCがある。THCは通常、神経伝達物質カンナビノイドに反応する脳の受容体を活性化する。他にも、活性化したニューロンが神経伝達物質のグルタミン酸塩とギャバを放出して、他のニューロンを興奮・抑制させる確率を下げる。

もう一つ一般的な薬物がカフェイン。これにはTHCと正反対の効果がある。神経伝達物質の放出の確率を上げることで、グルタミン酸塩とギャバを放出する多くのシナプスの伝達を増やす。

あと、コカイン、アンフェタミン、メタンフェタミンはドーパミンの輸送をブロックし、中毒性も高く、発育中の胎児(妊娠中にとる薬物に影響される)に対して、広範囲にわたる脳の損傷を引き起こすことがある。