受験脳の作り方 池谷裕二
がむしゃらだけでは報われない
復習のときも、はじめて学習するときと同様に、目で追うだけでなく手で書く、声に出すといった努力をして、できるかぎり多くの五感を使うべきです。こうした目・耳・手などの五感の情報はすべて海馬を刺激するのに役立ちます。
・海馬の性質を考えた復習プラン
学習した翌日に1回目
1週間後に2回目
2回目の復習から2週間後に3回目
3回目の復習から1ヶ月後に4回目
4回の復習を少しずつ時間間隔を広げながら2ヶ月かけて行う。逆にこれ以上に復習をたくさんする必要はないと思います。
復習の効果は同じ内容のものに対して生じます。ですから復習は同じ内容の学習を繰り返すことが肝心です。
脳は出力を重要視する
①すべての単語を暗記
②間違えた単語のみ暗記
その後に、「すべての単語」テストor「間違えた単語のみ」テスト
この①②+「すべての単語」テストの組み合わせが一番良かった。すなわち記憶するにはテスト(出力)を全部やったほうが良い。
情報の入力と出力はどちらも大切ですが、脳は「出力」を重要視しています。ですから、「詰込み型」の勉強法よりも、「知識活用型」の勉強法のほうが、効率的だということになります。
身近な例で応用するのであれば、教科書や参考書を何度も見直すより、問題集を何度も解くような復習法の方が、効率的な学習になります。
童心こそ成績向上の栄養素
LTP(長期増強)を起こすために刺激を繰り返す回数を減らす秘訣の一つ目は、その刺激を、「シータ波」の出ている状態で与えることです。
シータ波は好奇心の象徴です。興味をもっているものごとは復習回数が少なくても覚えられることがうかがえます。
LTPの性質を通して、覚えようとする対象に「いかに興味を持つか」がとても重要なことが分かりました。つまり、勉強を「つまらない」と思いながらやると、結局は復習の回数が余分にかかるだけなのです。
「よし、朝だ!」というのも「あーあ、朝か」というもの、あなたの考え方次第です。
アセチルコリンはシータ波のもとです。海馬を活性化させて意識をハッキリさせたり、記憶力を高める働きをします。
思い出という記憶の招待
より少ない刺激回数でLTPを起こす、もう一つの方法が「偏桃体」という脳の神経細胞を活動させることです
偏桃体が活動するとLTPが起きやすくなります。言い換えれば、感情が盛んなときにはものごとが覚えやすいことになります。
ライオン法
お腹がすいているときの方が記憶力が高いことが科学的に証明されています。お腹が空っぽになるとグレリンというホルモンが胃から放出されます。このグレリンが血流に乗って海馬に届き、LTPを起こりやすくさせるのです。
一方、食後は満腹になってグレリンが減少するだけでなく、胃や腸などに血液が集中するからでしょうか、頭脳の活動は低下しがちです。
歩くと海馬から自動的にシータ波が出ます。その結果、記憶力が高まります。動物実験のデータによれば、自分の足で歩くことがもっとも効果的なシータ波の出し方のようですが、そうでなくても、乗り物で移動しているときでもシータ波が出ることが分かっています。
部屋の温度は若干低くした方が、学習効果率が高まります。
寝る前は記憶のゴールデンアワー
夜に覚えたグループでは、学習の直後に睡眠します。覚えたら忘れないうちに寝る、これが鉄則なのです。
暗記に関していえば、朝型よりも夜型が効果的です。ただし「夜型」は「夜更かし」とは意味が違いますから、気を付けて下さい。
自分の学力を客観的に評価しよう
いくら非効率に感じられても、きちんと学習手順を踏んだ方が結果的には失敗の数が少なくてすみます。しっかりと基礎を身につけてから、少しずつ難易度を上げていった方が、最終的には早く習得できるのです。
このように手順を訳て覚える方法を「スモール・ステップ法」といいます。
想像することが大切
単純な知識記憶でも、個人的な情報や周辺記憶に関連付けて覚えれば、経験記憶に近づきます。
連合によってものごとを次々と連合して、知識をより豊かな内容にすることを「精緻化」(せいちか)と呼びます。精緻化によって、ものごとを連合させると、そのぶん思い出しやすくなります。
覚えたことは人に説明してみよう
手軽な経験記憶の作り方は、覚えたい情報を友達や家族に説明してみることです。脳は入力よりも出力を重要視しているのです。